コレクションの紹介

動物プランクトンはマイワシ・サンマ・スケトウダラなどの水産資源の餌として重要な生物群です。それらの資源量は経年的に変動することが知られており、餌料生物の量や組成の変動がその原因の一つとして考えられています。水産資源を持続的かつ効率的に利用するためには、資源量変動のメカニズムを明らかにすることが重要で、そのため動物プランクトンを研究することが必要となります。

また最近の研究では動物プランクトンが、生活史などに関連して表層から中深層へ鉛直的に移動することで体内に蓄積した物質を運ぶ生物ポンプとしても大きな機能を果たしていることが分かってきました。この機能は地球上の二酸化炭素循環にも深く関わっていることから、動物プランクトン生産は地球規模の気候システムにも関係していると考えられています。従って、地球温暖化等の気候変動を考える上での重要な生物群の一つとしても注目されています。

日本周辺では長年に渡り水産総合研究センターをはじめとして、地方自治体の水産関係試験研究機関、気象庁、大学等によって動物プランクトンが採集されてきました。それらはそれぞれの目的に応じて分析されその後、個別に管理・保存されています。一方で、それらの標本を体系的に組み合わせて活用することができれば、さらに研究を進展させることができます。例えば、産卵域が九州南部~東海地方で、仔稚魚の摂餌域が東北~北海道というように、生活史が広い範囲に及ぶマイワシの資源量変動のメカニズムを餌料プランクトンから検討するためには、それに対応した水域で採集されたプランクトン標本が必要となります。従って、全国規模で収集した標本を体系的に分析すれば、資源量変動への餌料プランクトンの役割が解明できる可能性があります。

このような研究に幅広く活用することを目的として水研センターでは、全国で採集された動物プランクトン標本を体系的に収集し維持管理しています。


標本管理棟
動物プランクトンの役割
東北水研が収取した標本
管理研究棟内部の様子